DJIに次ぐドローンメーカーになれるか?

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産業用・ホビー用マルチコプターのシェアNo.1を長きに渡って獲得しているDJI(大疆創新科技有限公司)社。

ホビー向けドローンとして最初に発売された製品はParrot社のAR.DroneでDJIは後発だったのですが、高い技術力と製品開発にかかる意思決定が早かったため、瞬く間にParrot社を追い抜き、現在では7割ほどのシェアを獲得し、Parrot社はホビー用ドローン市場から撤退する羽目に。

「選ばれるドローン」を世に送り出すことに成功し、事実上の独占状態にあるDJI社。
ドローンシェアの残りの3割は他のドローンメーカーが製造しているわけですが。製品としては現行DJI製品の1世代から2世代前、下手をすると3世代前の性能しかないドローンがほとんど。
DJIの牙城を崩すのはなかなか難しい状態ですが、その牙城を崩すかもしれないドローンが先日発表されました。
今回は、新製品への期待も込めてカタログデーターをベースにしたインプレッションです。


結局はいいものが選ばれる

いい製品が選ばれるのは、市場原理の最たるものです。
特にドローンの場合は、遠隔操作で空中を飛び回ると言う機器の性格上、自律飛行機能の制度・通信品質・操作に対するレスポンスなど、総合的な性能と機器の信頼性が最も重要視されます。

可能な限り高性能なドローンを使用することは、飛行中の事故を防ぐためにも有効な手段であり、飛行時の安全性確保の観点からは、ドローンユーザーの義務であると考えています。
高度な操縦技術を要求されるドローン空撮や、橋梁などで行われる近接目視点検の代替手段としての撮影では、操縦者の技量と合わせて機体の制御システムの性能向上は、必須とも言える要素です。

GPS等の位置測位をカットしたATTIモードや、マニュアルモードでドローンを想いのままに操れる状態の操縦者が、現在販売されているPhantom 4 Pro V2.0やMavic 2等の最新機種を使うことが、最も安全な飛行体制であると言えます。
 

DJIの独占は消極的な支持の現れでもある

筆者の周りでは、機種は違えどDJIのドローンが100%のシェアを占めています。
ただ、皆が口を揃えて言うのは、「DJI製品でも100%の信頼を置いて飛ばしているわけではない。」と言うこと。
他のドローンメーカーが出している製品が、比べるに値しない性能であるがために、DJI製品が選ばれているという意見もあります。

DJIの製品に触れたことがある人であれば、分かるかもしれません。飛行に使用するソフトウエアのDJI GO 4は多くのドローンに対応し、パノラマ画像の撮影や、インテリジェントフライトモードの制御プログラムが含まれているため、とにかくアプリケーションの容量が大きいです。
よくアプリケーションが落ちたり、フリーズ現象が起こっていました。今もたまに起こります。
ジンバルの制御が間に合っていなかったり(Phantom 4 Pro)、カメラのクオリティも総合的には今一つなこと(Mavic 2 Pro)。機種によっては、飛行中にドローン本体の全システムが機能停止し、落下する(Spark)といった事象も報告されており、DJI製ドローンと言えども問題点はいくつもあります。

ただ、他のドローンメーカーが作るドローンと比較した場合、飛行中に何らかのインシデントを起こす可能性が圧倒的に低いこと。自律ホバリングの精度。機動性や操作性、ライブビュー伝送や通信系統の性能を含めた総合的な能力の高さが、DJI製品を選ぶ決定的な要素になっていると思いますし、筆者もこの理由でDJI製品を選んでいます。
 

中華ドローンが席巻する市場にアメリカンドローン

DJI製ドローンが市場を席巻する最中、2020年1月22日にアメリカ製のドローンの新製品、Skydio 2が発表されました。
機体のサイズや重量感はMavic Pro(旧式)と同程度で、大きな特徴は機載カメラが45度まで上を向くこと(もちろん真下も向ける)。

3眼カメラセンサー2組を用いての全方位障害物検知を行う衝突回避機能はメーカー曰く、Mavic 2以上の性能だとか。
 

カタログデータ比較|Skydio 2 vs Mavic 2

現行機種のライバルとなるのはもちろんMavic 2。
なので、この2機3種のドローンのカタログデータを比較しました。

機体のサイズはMavic 2が若干大きく、機体重量もMavic 2より200gほど軽い仕様です(旧式のMavic Proと同程度)。
飛行可能時間は最長23分とMavic 2の最長31分と比べると大幅に劣りますが、実用飛行時間が7割程と考えた時、想定される飛行可能時間は16分程。
15分飛べば、性能としては十分と言えるのではないでしょうか。

ドローンにとっての天敵、風に対抗するための耐風圧性能はSkydio 2(11.12m/s)に対してMavic 2(10m/s)は劣りますが、実用では15m/sほどの風の中でも、操縦者による介入があれば問題なく飛べる性能はあります。Skydio 2がどのくらいの風まで耐えられるのかは検証が必要です。
 

カメラ性能は?

Skydio 2 やMavic 2の様なポータブルドローンは「空飛ぶカメラ」としての性能が重視されます。
カメラの性能は、Skydio 2とMavic 2 Zoomがほぼ同じ性能で、12MPクラスの1/2.3インチCMOSセンサーを採用し、レンズは35mm判換算で20mmなので、Mavic 2 Zoom(最大広角24mm)よりもワイドに写るカメラと言えます。

撮影データは、静止画で先述の通り1,230万画素でJPEGとDNG(RAW)で撮影できます。
動画は、3,840 x 2,160(UHD/4K)24,30,48,60fps、1,920 x 1,080(Full-HD)30,60,120fpsの2サイズ5種に対応しています。
Mavic 2は2.7Kが撮影できる以外大きな差はありませんが、Skydio 2は4K 60fpsに対応しているため、動画撮影能力は勝りますが、動画フォーマットはMPEG-4にのみのため、プロユーザーにとっては残念なポイントかもしれません。
 

Skydio 2はジンバルに特徴が

Skydio 2最大の特徴が、カメラジンバルにあります。
一部機種を除いて、ほとんどのドローンは、カメラの操作可能範囲が下方向に水平から直下まで(-90°〜0°)の間でしか制御できませんでした(システム上で制限を解除すれば上方向+30°まで操作できるものもあり)。
このSkydio 2標準設定で-110°〜+45°の範囲でカメラチルトを操作でき、橋梁近接目視など、上を向いて撮影しなければいけない様な業務に従事する場合におすすめの性能です。
もしかすると、設定変更により+90°までカメラを向けることができるかもしれませんが、これは希望的観測。
 

Skydio 2の操作方法は3通り

スマートフォンなどのモバイル端末で機体を操作する方式。通信距離は200m
ビーコンセンサーを用いた自律追跡飛行。通信距離1.5km
専用送信機を使用するR/Cコントロール。通信距離3.5km
送信機を使用した場合の通信距離がMavic 2に劣る様にも見えますが、Mavic 2の通信距離の5kmという数値は、2.4GHz帯・空中線電力1Wの電波を空中利用した場合の数値を採用している可能性があるため、実用では3〜4kmだと考えれば、大差は無いのかもしれません。
 

充実した自律飛行機能

Skydio 2はコントローラで積極的に操作するより、自律飛行による豊富な自動撮影機能を商品コンセプトにしている様です。
機体に搭載された6眼カメラを用いて、周辺の地形や障害物を検知し、撮影対象が発信するビーコンを追跡して撮影する機能は、Mavic 2や他のドローンには無いものです。
橋梁点検や電波塔の点検など、障害物に接近する可能性の高い飛行環境においては、横方向の障害物も検知可能ということなので、受動飛行中は横方向の障害物検知が機能していないMavic 2に対してアドバンテージがある様に思います。
 

気になるお値段

Skydio 2とMavic 2、カタログに載っている性能を総合的に比べると、どうしてもMavic 2に軍配が上がりますが、圧倒的に勝てるポイントが1つ。

それは、ドローンのお値段。
比較表にも記載しましたが、機体と最低限の備品類だけであれば999ドル(関税・消費税別)で購入することができます。
Mavic 2 Zoomの基本セットが165,000円(税込)なので、機材購入の初期費用で10万円程の差があります。
ただ、Skydio 2の基本セットには送信機が付属しません。「予備のバッテリーも欲しい。」となると、追加部品を購入することになります。送信機と予備バッテリー2つ追加して金額は1,507ドル。同様のセットをMavic 2で用意した場合は211,750円になるので、Skydio 2は比較的お求めやすい価格設定だと思います。
 

DJIは日本市場をターゲットとしてくれているが…

最近ドローン関連のニュースを見ていると、DJI製(中国製)のドローンを排除しようとする動きがあります。
日経新聞:国産ドローン普及を支援 政府、中国製に安保上懸念
アメリカのトランプ大統領が中華ドローンは安全保障上の懸念材料になると発言して、中国製ドローンの使用差し止めるなどの対応をして以降、日本政府も追従するのは目に見えてましたが案の定。
海上保安庁は一足早く中国製ドローンの排除方針を固めています。
しかし冒頭にも述べた通り、DJI製品が選ばれている理由は、今ある他社製品と比べて、圧倒的に高性能かつ安全性が高いからであることを認識していないとしか思えません。

後発が育たないという意見も分からなくは無いですが、やはり「行動が遅い、技術力が低い=製品クオリティが低い」という認識になります。
フランスのParrot社はDJIより早くホビードローン市場に参入していましたが、こちらは技術力と商品力でDJIに敗北。ホビードローン市場からは撤退してしまいました。

反対に、DJIを超える性能のドローンを開発し、同様の価格帯で販売されているのであれば、筆者も飛行の安全性の担保と、撮影成果物のクオリティのためにその機材を選びます。生産国など気にしません。

ドローンのプロユーザーとしての視点で見ると、DJIは日本を市場として見てくれている企業なので、面倒な電波規制にも対応(技適の取得と特定小電力無線への対応のため5.8GHz帯の遮断)し、日本仕様の製品を個別に製造してくれています。
ただ、今回紹介したSkydio 2は日本の技適を取得しているのかは不明です。少なくとも使用周波数が5.1GHz帯と5.8GHz帯を選べる以上、電波法第4条のただし書きの規定(特定小電力無線)に適合させる気は無い様です。そりゃそうですよね。
この辺りは、現物を確認し次第、情報を更新します。

製品リリース日に現物を見れた!


たまたま縁あって、Skydio 2の現物の飛行を見ることができました。
見た目のサイズ感はMavic 2とほとんど変わりません。
当日が初のテストフライトとのことで、いろいろとデータを取っていました。

逆さに取り付けられている前のプロペラが斬新です。
でもよく考えると、下にある方がいいのでは?
このドローンは、上下3つずつ取り付けられた、ビジョンセンサー用カメラ搭載の都合上、この様なプロペラ配置になった様です。
 

DJI製品の排除はナンセンス(但し現状は)|第2の競合メーカー求む

ドローンの性能や飛行の安全性を考えた時に、導入機材からDJI製を外すのはナンセンスですが、「現状は」の但書がつきます。
今回Skydio 2という、DJIの牙城を崩すかもしれない製品が登場しました。実際に使ってみないと細かいことは分からないですが。DJI製品に対してはカメラ性能への不満がどうしてもあるので、選択肢が増えるということ、これはとても望ましいことです。

少なくとも筆者にとっては、「使ってみたい」と思わせるドローンです。
Skydio 2を飛ばす機会があれば、また細かくレビューしてみたいと思います。


筆者プロフィール
藤永 優 ドローングラファー・オペレーター
専門:映像空撮、ドローン法規
ドローン飛行時間:実際のところわからない(たぶん800時間くらい)
元々は地上のカメラマンだったのがドローン空撮を主体とした空撮屋へ。
映像制作からダムや橋梁などのインフラ保守まで、自動操縦では真似のできない攻めの姿勢を追求したフライトかつ、要望された映像は、法に触れないギリギリラインまで突き詰めて形にすることが信条。
日本テレビ系列「嵐にしやがれ」やテレビ東京系列「二代目 和風総本家」などのテレビ番組制作ロケ、PV制作や記録映像の撮影、大学と共同での海洋調査など幅広い分野でのドローン飛行実績を有する。

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